Wカセットデッキ、TC-WE805Sの修理~敗北案件~その①

少し前に、近所のハドフで見かけたWカセットデッキ。普段はWデッキなどまるで関心がないのだが、そのデッキのカセットリッドに “DOLBY S” の文字が見えた。「WデッキでSが付いた機種なんかあったんだ。」と少し興味が沸き、帰ってから調べてみるとSONYのみがS搭載のWデッキを数機種出していたらしい(全メーカー調べたわけではないけど、SONYとTEACくらいしかSを搭載したデッキがないから、間違いないと思う)。

数日後、別のハドフで研究対象のデッキを入手。TC-WE805S、1996年発売、当時43,000円。ハドフの説明には、デッキBにカセット引っ掛かり、イジェクトもできない。デッキAは少し動く?電源スイッチのラッチが効かない。的な説明。早速開腹し、デッキBからカセットテープをサルベージ。リッドをロックしているレバーの戻しスプリングが外れていたので掛けなおして、リッドの開閉はできるようになった。ロジック系はというと、AB共にまるでダメ。カセットのメカを下ろして修理することにする。メカの下ろしは、さすがに新しい年代のデッキだけのことはあり、とても簡単だ。写真の状態にするのに30分はかからない。メカ部はユニット化されており、モーター制御用の基盤は背面に背負っている。構造は複雑で華奢なのだが、割と分解はしやすい。見ていくと、キャプスタンベルトがのびのびでリールを回せてない。適当な平ベルトをかけて、何とか動くだけまでは回復させた。ついでに、中央の液晶とロジックSWの基盤を外し、タクトSWを全交換した。かなりの数だが、再分解するのは面倒なので一気にやっつける。しかし、反応しないスイッチが多いな?何でだ?理由は後から発覚する…

電源スイッチは、国内で見つからず、初めてAli Exで購入した。動作は問題ないようだ。どうもテレビの電源スイッチなどに使われているスイッチらしい。少しまとめて買ったので、同様の修理に使えるだろう。

さて、一旦組み立ててテープを再生してみる。うわぁ…酷い音だ。適当な平ベルトを付けているせいもあるが、ワウフラッターが凄い。それでも、モーターの通電が久しぶりなのか、時間とともにいくらかましになってきた。録音もチェックしてみようと録音レベルのつまみを見ると、なんか傾いている。パネルを外し、ボリュームの付いている基盤を外して見ると、割れているのを発見。パターンもめくれている。ということは…この個体はフロントパネルから落とされたことがあるということだ。

そう考えると、タクトSWに不良が多いのも、ピッチコントロールのつまみ先端が折れているのも納得できる。きっと他にも不具合があるだろう。長丁場になりそうである。