E-bikeで上った乗鞍

今年の自転車イベントは、春先のロゲイニング以外全てノーエントリーだった。それでも、イベントで集まる仲間との再会を楽しむために、美し、乗鞍のヒルクライムは応援に行った。

実は去年も乗鞍には上っていない。エントリーはしたが、美し乗鞍共にDNSであった。DNSの原因は腰。そして今年は前半戦で3回のギックリ腰、さらに膝のトラブルも加わり、まさに踏んだり蹴ったりで、とても自転車に乗れるような体ではなかった。しかし応援に行って、乗鞍の常宿である寿屋さんから眺める乗鞍は美しく、そこまで自力で行けない自分がとても情けない。

年内に乗鞍行きたいなぁ、バスで登ってでも…なんて考えてるうちに10月も中盤に差し掛かってしまった。そんな折、学生時代の友人から急なお誘い。「来週、木金土でどっか温泉行かない?」と来たもんだ。10月20日(日)の夜10時にだ!ほんとに急だよ!

普通に仕事をしている人なら、そんな急な予定に合わせられるはずもないのだが、私は自営業。たまたま少し予定に余裕があり、調整すれば金土なら何とかなると返信すると、「いや、実はいつでもいいんだ」と来た。理由を尋ねると、骨折して仕事を休んでるから湯治に行きたいとのこと。できれば硫黄泉の温泉が良いそうなので、それではと乗鞍を勧める。と、同時に乗鞍観光センターのレンタルE-bikeの予約を入れる。実は以前から興味があり、いつか借りて乗鞍を上ろうと思っていたのだ。そして、いつものお宿の寿屋さんに予約を入れて、即席ツアーの準備ができた。

日程は10月25(金)〜27(土)の2泊3日の予定となった。友人は更に前日から諏訪の温泉に行き、そこから乗鞍に来るという。私は25日の早朝5時に家を出発、8時半には乗鞍に着いた。9時に観光センターが開くのを待ち、自転車を借りる。貸出されたのはGIANTのE-bike、ESCAPE-XE。WEBSITEではスペシャライズドのE-bikeを貸し出しているとのことだったが、まあいいや。軽く説明を受けて、自転車を受け取る。説明のポイントは、フルにアシストを使い続けて登ると、充電が足りなくなるということだった。まあ、それは想定内だ。さて、一応時間も計ってみるかと、腕時計のストップウォッチをセットしてスタートする。

このE-bikeのアシストは、ECO、NORMAL、SPORTSの3段階。プラス、10速の外装ギアが付いている。ECOモードではわずかなアシストしかしてくれないので、走り出してすぐにNORMALに入れる。自転車自体の重さが20キロもあるので、ECOではまるで無理だった。私の右膝はあまり負荷をかけられないため。10速の外装ギヤはかなりのワイドレシオだが、常にトルクがかかった状態から変速するので、あまりスマートではない。1段上げるたびに、ゴキンという嫌な感触がある。

観光センターから三本滝までは緩やかな登りなので、そこそこスピードも乗る。15〜20キロを行ったり来たりしながら走っていく。全く楽ちんではあるが、ちゃんと自転車感はあり、自分が速くなったように錯覚してしまう。

三本滝のちょいと上から

三本滝から先は九十九折りも始まるので、キツいところだけSPORTSモードに入れる。普段からは考えられない、とんでもないペースで走って行く。位が原まで1時間20分くらい。一応、要所要所で少し休み、呼吸をリセットしてまた走る。

あっという間に大雪渓(雪はゼロ)を通り過ぎて、あろうことかラストスパートまでかける余力があり、軽々とゴール… タイムは1時間44分…  自分的には、金メダル以上やん…普段は4時間くらいかかりますぜ…疲労感は三本滝まで上ったくらいの消耗かな?

ゴールの段階でバッテリー残量は30%もあったので、もう少し積極的にSPORTSモードを使えば、更にタイムは速くなったろう。

それはともかく、久しぶりの乗鞍畳平は素晴らしい晴天である。風もなく穏やかな陽射しで、薄着でも寒くはない。すでにレストラン等の施設は冬仕舞いが済んでおり、人出はまばらだ。

畳平からはちょっとした登山もできる。体力も時間にも余裕があり、トレッキングシューズも履いて来たけど、今日は山はいいかな。なんか、ここまで来れただけでお腹一杯だ。

さて、普段ならお楽しみの下りだが、E-bikeはどうだろうか?下りの寒さは知ってるので、持参したカッパの上着を着る。グローブはフルフィンガーに替えて、下り始める。流石に油圧ディスクなのでブレーキは効く。遊びもまあ良い感じ。タイヤはパンクを恐れてか、エアーがパンパンに入れられている。おそらく、指定空気圧より高いと思う。加えて、何やらハンドルまわりからガタガタと盛大な音がする!止まって確認するも、特に緩んでる感じもしない。まあ、仕様なのかと思い、ガタガタと賑やかに下る。

そして、私が感じる最大の難点はアンダーステアだ。巨大なバッテリーを抱えるフレームと駆動ユニットまわりの凄まじい剛性がそうさせるのだろう。抜重して目線を曲がる方向に向けただけでは回頭しない。とは言っても、曲がらなければ曲げてやればいいことなので、ステアを入れて曲がるようにする。でも、ノーサスなのでいつものMTBのようなペースでは下れない。借り物なのでちょうど良いか…まあ、下りを楽しまない人にとっては、賑やか以外は別段問題はないだろう。そして、普段よりは遅いが、あっという間に観光センターに帰着した。

うーん、凄すぎるなE-bike…ちょっと古い型でもこれかい。後で調べたら、借りたバイクはヤマハの駆動ユニットを積んでるらしい。そう言われてみれば、PASのラインナップに似たようなバイクがあったな。でも、一応自転車感はかなりあるし、重たい車体、ポンコツな私の体力というハンデをもってしても、あの時間で畳平に行けたのは夢のような経験だった。自転車に乗れない、走り切る自信がないとくすぶっていたのが馬鹿らしく思える。そんなときはツールに助けてもらえばいいのだ。

今回借りたようなスタンダードなE-bike は、GIANTでもスペシャでも30万少々のお値段。まあ、買えなくはない。でも実際にバイクを見ると見慣れた30万クラスのスポーツ車のクオリティーではなく、少々安っぽい。駅まで乗ってくクロスバイクのようなのだ。悪く言えば、ツールとしての美しさがない。だからというわけではないが、私が実際にE-bikeを購入するのは、少し先になるだろう。今年は全く乗れてはいないが、まだこちら側で足掻く予定でいるのでね。(笑)