はるか昔の学生時代、それは昭和の最後の数年間であった。水道橋にある私が通う大学のまわりには、たくさんの飲食店があった。ラーメン屋に定食屋、洋食屋と選択肢は無数にあった。もちろん学食もあり、当学のそれは格安でボリュームもありよく使っていたのだが…いかんせんお味が…ということもあり、贅沢にも外食することはよくあった。
当時の昼食の平均価格は500円前後(ほとんど以下!)ラーメンや牛丼、カレーをよく食べていた記憶がある。その牛丼屋の中に、あるチェーン店があった。屋号を「たつ屋」という。学校の周辺に数店舗、近くの駅界隈でも見かけたことがあったと思う。当時はネットなどないので、どれくらいの規模のチェーンなのかは全く知らなかった。
メニューは、牛丼、開花丼(牛肉の卵とじ)、親子丼だったかな?どれも300円前後だったと思う。牛丼は少し変わっていて、豆腐とシラタキの入ったスキヤキ風だった記憶がある。安くてボリュームもあり、かなりの頻度で利用していた。
当然だが、卒業とともに大学界隈に行くことは、あまりなくなった。数年に一度、学生時代からの行きつけの喫茶店には行っていたが、大学界隈で食事をすることはなくなり、いつの間にか、たつ屋はなくなっていた。つい最近、なぜか昔のことを思い出し、そういえば昔大学の近くに牛丼屋があったなぁ…と思い出すことがあった。全く期待することもなく食べログを開き、検索してみる。
すると、まさかの屋号がヒット。メニューの牛丼の写真を見ると…、あのたつ屋に間違い無いと確信する。さて、肝心の場所はどこだ?、何と新宿である!これは行かねばなるまい。
しばらくしてから都内での飲み会のお誘いがあり、場所は都合の良いことに新宿だった。
予定より早めに家を出て新宿に向かう。西口に降りて、慣れない人混みに揉まれながらもお店に到着。場所は、都内を車で通過する仕事の時に、前を通って確認済みであった。18時過ぎの店内は6割ほどの着席率。その後すぐに満席になった。私は迷わず牛丼の並を注文する。食券はなく、口頭での注文がなぜか嬉しい。30秒ほどで牛丼が到着。
ビジュアルは当時の記憶を呼び起こさせる、豆腐が入った牛丼。しらたきは入ってなかった。そこは記憶違いだったかな? お味は…正直、昔のことで、覚えていない。でも、薄味の柔らかい牛肉の乗った牛丼はとても美味しい。この一等地で税込400円と、弛みなき企業努力の賜物の価格と美味しさには、感服せざるをえない。これから先、お店が続く限り、新宿に来たら必ず立ち寄ることになりそうだ。
キカイとごはんと猫が好き。