Valentino Rossi(ヴァレンティ―ノ・ロッシ)というレーサーがいる。モーターサイクルレースの最高峰であるMotoGPに長年参戦してきたイタリア人レーサーだ。戦歴に関しては割愛するが、文句なくMotoGP史上最高のライダーと言える。そのロッシが、2021年シーズンをもって引退した。私がバイクのレースに興味を持ち始めた頃に頭角を現し、実に21年にわたってMotoGPをけん引してくれた。ここ数年はチャンピオン争いからは遠のいていたが、その存在感は抜群で、引退する前からレジェンドと呼ばれていたほどだ。
ロッシのキャリアは、125のアプリリアから始まり、最高峰のMotoGP(GP500)に上がってからは、ホンダ→ヤマハ→ドゥカティー→ヤマハと、ヤマハでのキャリアが最も長く、4回のワールドチャンピオンをもたらした。また、ヤマハのMotoGPマシンYZR-M1の開発に大きく貢献したライダーでもある。
そのロッシが駆ったヤマハのマシンたちが、一堂に会する展示が行われるという。場所は、磐田市のヤマハ本社にあるコミュニケーションプラザ。2022年1月某日に、友人二人と行ってきた。
ヤマハコミュニケーションプラザは入場無料。今のところ予約なども必要ない。1階には2000GTやLFAなどのヤマハが携わってきた車と、現行のバイクたちが展示されている。ロッシの展示で影が薄くなってしまっているが、ヤマハは2021年のMotoGPにおいて、ワールドチャンピオンを獲得している。ライダーは,フランス人のファビオ・クアルタラロ。もちろん彼の駆ったバイクも展示されている。横には、そのバイクに搭載されたエンジンも展示されているのだが、恐ろしく小さい!シリンダーより幅の狭いヘッドも驚きである。他にも様々な展示があるのだが、後でゆっくり見ることにして、いそいそと2階へ向かう。
創業初期のヤマハヒストリーの展示を抜けると、ロッシのバイク達がこちらに向かってお出迎え!圧巻である!同車種のMotoGPマシンが一堂に会するなど、滅多にないことだ。そのどれもが歴戦の記憶を纏い、ヤマハのデザインはレーサーであっても美しい。
ロッシの逸話はいくらでもあるが、キャリアが長いとは言え、彼ほど多くのライバルたちを失ったライダーもいないだろう。トラックで、公道で、プライベートな練習で、多
くのライバルたちが先に行ってしまった。そのライバルたちが生きていれば、ロッシの戦歴も少し変わっていたかもしれない。彼のあまりにも長いキャリアは、そんなライバルたちの分も走りつくしてくれた、と思うのは私だけではないだろう。ロッシのバイクとその戦歴は、ライバルたちとの熱い戦いを思い出させてくれる。
ロッシは2021年度をもって引退したが、彼にはVR46という自身のチームがある。そこから飛び立ったライダーたちはすでにGPを響もし始めている。バイクという乗り物は、趣味でもレースでも簡単に人の命をさらっていく。今後、全てのライダーたちが欠けることなく、自身のキャリアを終えられることを願ってやまない。
キカイとごはんと猫が好き。