SONY PS-LX7の修理×2

ソニーのレコードプレーヤー、PS-LX7というフルオートプレーヤーを修理した。1981年当時、5万円の普及型プレーヤーだ。当時の5万円は安くはない金額だと思うが、オーディオ業界では「普及機」扱いだ。

さて、初めに断っておきますが、この機種の修理は容易ではありません。なぜなら、メーカーからは供給されない機能部品が壊れている可能性が高いから。というか、おそらくすべての個体がこの部品の破損で動かないと思う。私は比較的メカ部分のやっつけ修理にたけているため、何とか直すことができたが、修理目的でのジャンク品の購入はお勧めできません。

なぜか手元に2台あるので、同時に直していこうと思います。症状としては、どちらもアームが動かない。1台はレコードを乗せるとプラッターは回転し、クォーツロックがかかる。もう1台はロックはかからず、どんどん速く回転する。まず、ロックがかかる物からスタート。

幸いにも、この2台はダストカバーは生きており、ヒンジもしっかりしている。そのため、横に立てて修理することにする。はじめに裏蓋を外し、動きを観察する。まず、アーム駆動用のモーターからアーム搬送機構へ動力を伝えるベルトが伸び切って変形している。これではアームが動かない。しかもこのベルト、超小径である。たぶん20ミリ以下。手持ちの角ベルトはおろか、市販品ではこの径の物は存在しないと思う。最初、いつものバンコードで作成を試みたが、線径が太いうえに径が小さすぎてうまく作れない。そこで、本職で使っている市販のOリングセットの中から合いそうなものをチョイスした。

動かしてみると、何とか搬送機構は動きはするものの、アームを拾いに行かない。さらに分解するのだが、ここから先は極細のフォノケーブル5本を外す必要がある。慎重にはんだをはがし、作業しやすいように軽くテープでまとめておく。

右側の折れたアームがスプリングの役割をします。

これが問題の部品である。アーム搬送用のギヤに、アームを拾いに行くフックがついている。そのフックの上についてるプラのアームが必ず折れている。このアームは、フックに適度なテンションをかけ、アームの裏にあるピンを捕まえる構造になっている。こんなに細い樹脂のアームでは新品でもすぐに折れてしまいそうだ。まずは脱脂して、瞬間接着剤で元の位置に付ける。それだけではマッハで折れてしまうので、まわりを補強していく。カッターでホットメルトのスティックを薄く切り、それをアームに乗せてはんだごてで溶かして補強していく。直接ホットメルトを使うと吐出量が多くてうまくいかない。組み上げたときに、フックの動きを妨げないように盛るのが難しい。

組み立てるとこんな感じ。アームの上のストッパーにうまく当たるようにしなければならない。盛りすぎ注意。右に見える黒い突起は、LPとEPのリードイン位置を変える機構。中心の真鍮スリーブのまわりももれなく割れてるので、半田で溶かして補強しておく。

さて、これから組み上げていくのだが、ロータリーSWの接点をどの位置にしておくのかわからなくなってしまった。そんな時のための,2台同時修理ともいえる。もう1台を参考にしながら、何通りかの位置を試して、なんとか組むことができた。とりあえず、動作確認し、大丈夫そうなのでフォノケーブルをハンダ付けした。音出しテストにかけながら、2台目に手を付ける。

R135が怪しい

この機体も1台目と同じところが破損しているので、そこから修理する。組み上げて、テストするも、プラッターは回るがリードイン動作はしない。モーターが変な動きをしている。電気系統に目を移すと、サイズセレクタ用のランプが点灯していない。外すと、球は切れてないが、点灯に必要な電圧が出てない。たぶん6V前後必要なのに、3V以下だ。回転を検出するマグネットセンサーにも電圧が入ってないようだ。パターンを逆に追っていき、もう1台と比較しながら部品を外して計測していく。比較的電源に近いところなので、追いやすい。コンデンサかトランジスタではないかと思い見ていくも、どれも問題がない。次にそこそこ大きな抵抗を測定すると、わずかに出口の電圧が違うものを発見。カラーコードで読むと68Ω、計測する40Ω台である。ちょっと値から外れているのが怪しい。とりあえず、手持ちの抵抗を組み合わせて近い値の抵抗を作る。仮組して動作させると、不具合は解消しているようだ。直列につないだ抵抗をハンダ付けして組み上げていく。サイズセレクタのランプも点灯し、クォーツロックもかかるようになった。後は、しばらくランニングテストをして完成だ。

さて、今回の修理から便利な道具を使うようになった。それがこれ、自動ハンダ吸い取り機だ。今までは、手動のばね式の吸い取り機と、吸い取り線を併用して作業していた。しかし、これが効率が悪いことこの上ない。複数の部品を外して計測するには、相当な根気がいる。自動吸い取り機があれば、そんな作業も楽しくなる。少々お値段は張るが、2021年の買ってよかった道具ナンバーワンである。