自転車トラブルのお話です。私の学生時代の自転車では、そんなトラブルは聞いたこともなかったのですが…
気がついたのは一昨年のこと。記事にも書いたプジョーのクロスバイクを組み上げて走り始めた時、ブレーキから金属同士が擦れる嫌な音がし始めた。車やバイクのブレーキの摩擦面が完全に消失し、金属同士が擦れる最悪の状態になった時のあの音だ。ブレーキシューを外してみると、リムの表面がはがれたと思しき破片が刺さっている。この時使用していた機材はどちらも中古の、シマノの軽量リムと安いカンチブレーキ。リムはレコード溝よろしく激しく削れて、おそらく使用限界に達していると思われるものを使っていたので無理もないのだと思っていた。そのあとは、タイヤを外してベルトサンダーで大まかな段差を研ぎ、オイルストーンであたりを出してから、現在も使用している。まあまあ制動も出ているし、長距離を走らないのでよしとしている。その時は、使用限界に達しているようなリムを使うからそんなことになるのだなあと、一人納得していた。
そして先日、ロードレーサーで土砂降りの中を長時間下っていた時のこと。少し下っただけで、例の金属同士の不快音がしはじめた。正直、このロードレーサー、年間にほとんど出番はなく、いつもお家でお留守番している緊急用機体。トータルの走行距離も500キロにも届かない、ほぼ新品のブレーキを備えている。リムはシマノの普及グレードのR500、キャリパーはTIAGRAだ。音がし始めてから少し下ったところで止まり、上からフロントブレーキを覗いてみると、シューの上に乗った金属の粉が見える。リムとの当たりは悪くないのでそのまま下ることにする。前方視界のほとんど効かないガスの中、土砂降りのたたきつけるような雨を顔面に食らいつつ、効かないブレーキを握りつづけること20キロ以上、途中ワイヤーの引きを2回ほど調整しながら下った。こんなすさまじいい雨の中を下るのは、学生時代の足柄峠の下り以来のこと。もっとも当時の方が勾配、雨量共にすさまじく、距離は短かったものの途中でブレーキシューが終わり、転倒させて車体を止めた覚えがある。
さて、その翌日洗車を終えたロードのブレーキを外して驚いた。完全に終わっている。縦溝が完全に失われているものもある。そしてやはり、アルミ片が食い込んでいる。リムは数万キロを走ったかの如く、すさまじい溝が刻まれている。もともとTIAGRAグレードのブレーキは効かないことに定評があるのだが、出番の少ない機体なので特に気にぜずそのままにしていたのが悪かったのか? シューの表面を触ってみると、とても固く、さらにアルミ片を掘り出そうとすると、かなり脆い素材であることがわかる。このことから、制動時のリム表面の温度は摩耗による放熱が期待できないため、かなりの高温になると思われる。そのため、リム表面が溶け出しシューに刺さるのではないかと思う。それには、リムの材質のアルミが、不純物の多い物であることも一役買っていると思う。
まあ,起こってしまったことは仕方がないので、リムはタイヤを外してオイルストーンであたりを取り、シューは社外メーカーのマルチコンパウンドの物に交換した。もちろん、出番の少ない機体なので、試乗もしてないけどね。
キカイとごはんと猫が好き。