私は、そんなに多くの本を読むわけではないのだが、読むこと自体は昔から嫌いではなかった。小学生の頃読んだハヤカワのSFに始まり、浪人時代の文学史の授業から興味を持ち、大陸の歴史物を読むようになり、さくさく読めるスパイ物のミステリーなども好きだ。最近では、ipadのアプリで読むこともできるのだが、やはり紙に印刷された活字(まさに活きた字である)を読むのが好きなようだ。
本を購入するに当たっては、近所のリサイクル書店にも助けられることも少なくない。特に文庫本においては、町の本屋さんより多くの本から選ぶことができるのでうれしい限りだ。
ここ数年、歴史小説を探すとき、三国志関係の小説を買うことが多くなった。そのきっかけはおそらく、学生時代にモーニングで連載が始まった「蒼天航路」を読んでからではないかと思われる。漫画とはいえ、毎週買うほどのゆとりは当時はなく、すべて読んだのはずいぶん後のことだ。その中に描かれている人物達は、自分が知っている三国志(大学受験で形だけ知っていた三国志)とは違い、生き生きと人生を駆けていた。
歴史物の中でも、三国志はちょっと異質な存在だと思う。話自体は、2000年ほど前の後漢末期に乱立した群雄たちの興亡史なのだが、何しろものすごく昔の話である。元になる文献にどこまで則しているかも不明であるし、口伝により伝わっている逸話なども途中で加えられているかもしれない。もちろん、作家による脚色も相当なものだろう。
つまり、作家の数だけ三国志はあり、登場人物や史実にある程度則していれば、何でもありということになる。三国志関係のほとんどの小説では、登場人物たちはわれわれと同じような思考で行動しているように書かれている。正直、2000年も前の人が、現代人のような理屈で物を考えることなどないであろう。「いつどんな戦いがあった」、「誰が死んだ」以外のことは全て想像でしかないと思う。それでも、彼の国で、他の国々で、連綿と語り継がれてきた登場人物たちの人物像は、とても魅力的である。
ちなみに、今読んでいるのは写真の北方謙三版の三国志である。全13巻の大作であるので、私の知らない人物や、相関関係も少しづつ違っているので、なかなか面白い。ほとんどが作りであるとは思うが、一人ひとりの人物にかなり掘り下げたストーリーを盛っているので、飽きずに読み進めることができる。現在6巻目。
キカイとごはんと猫が好き。