毎年参加している乗鞍ヒルクライム、昨年までの2年間はコロナの影響で開催は見送られていた。今年の開催も危ぶまれていたが、厳重な感染症対策が講じられた上での開催となった。とは言え、過去2年間も「勝手に乗鞍」と称して、毎年常宿に宿泊してエコーラインを走ってはいた。公式な大会は3年ぶりだが。私にとってはいつもの乗鞍なのだ。
8月27日土曜日早朝、同行する友人M氏とともに乗鞍へと向かう。M氏は千葉からの参加。ここまでの運転でお疲れのところ申し訳ないのだが、更なる下道走行にお付き合いいただく。M氏とは年に数回何らかの形で会ってはいるのだが、他愛のない話が尽きることはない。途中、諏訪南から岡谷までだけ高速を使い、11時を少し回ったところで宿に到着。近所のそば屋で再開した仲間たちと談笑したり、明日の受付をしたりで、あっという間に1日が過ぎていく。
翌28日早朝は小雨交じりの曇り空、大会の開催には影響なさそうだ。雨が小降りになったところで、スタート地点へと向かう。今年のスタートは例年とは違い、クラスごとのスタート合図はなし。クラスごとに設定された時間枠内で、各自勝手にスタートするスタイル。要はいつスタートしても良いのだ。検温で渋滞したスタート待機場を通り、仲間数人とボチボチスタートする。
大体いつもと同じようなペースで走り出す。私の乗鞍は「参戦」ではなく、「参加」であるので、至極ゆっくりと登って行く。恐ろしい数の自転車に追い抜かれるのもいつも通り。しかし、最初のチェックポイントである三本滝を過ぎたあたりから、何やら様子がおかしい。足が回らない… 三本滝からは勾配がきつくなり、道も狭くなってくる。貧脚の私にとっては体力的にもきつくなってくるのだが、、いつもより早く足が悲鳴を上げ始めた。血液中の糖分を使い切った、いわゆる「売り切れ」状態とも違い、単純に脚や肺が無理だと告げている。気が付くと、どこで引き返すのかというところまで追い込まれている。追いついてきた同宿の友人W氏も同じような状態らしく、「位ケ原」まで行こうと意見が一致した。そして何とかたどり着いた位ヶ原で引き返し、リタイヤとなった。
その3週間後、私はまた乗鞍にやってきた。もちろんおひとり様で。レースの結果はともかく、乗鞍に来て畳平まで走れなったのが、とても悔しかったのだ。心機一転サクサクと畳平まで登りたいところだが、体力はさほど変わらないはず。苦戦が予想される。
軽く体をほぐし、いつも通りのんびりスタートする。自転車はいつものMTB、ゼッケンも大会のものが付いたままだ。三本滝を過ぎる。3週間前ほどではないが、かなりきつい。やはり足は回らないのだが、時間だけはたっぷりあるので、休みながら登っていく。前回リタイヤした位ヶ原まで登ってきた。やはり、今日も相当体がきつい。少し長く休んでスタートするも、呼吸がおかしい。少し走ると、肩で息をするほど苦しいのだ。少し走っては止まって息を整え、また少し走る。森林限界を過ぎたあたりから、全く自転車に乗ることができなくなった。残りは3キロか、5キロか?普段からサイコンはおろか、ナビも使っていないのでよくわからない。まあ、距離などはどうでもよく、ともかく上まで行きたいのだ。時間はたっぷりあるので、自転車を押して歩いていく。
スタートしてから、5時間は過ぎただろうか。ようやく、県境の看板のあるゴール地点までたどり着くことができた。疲労はすさまじく、しばらくは動くことすらできなかった。呼吸が整ったところで、ゼッケンを外す。今までに感じたことがないほどの達成感だが、気分はあまりよろしくはない。ようやく今年の乗鞍が終わったというだけで、来年に向けての大きすぎる課題を残すこととなったからだ。
レース後の平日とは言え、登っている途中、数代のロードに抜かれた。その中には、軽快に走るアシスト車もいた。そして、全て私がゴールする前に下っていった。「参加」を公言する私の自転車に対するスタンス。全て自力で走る必要があるのだろうか?そんなことも考える。でも、まだ向こう側には行きたくはない。「上げていくしかないな…」来年の乗鞍が始まった。
キカイとごはんと猫が好き。